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なかよし献立でパスタ?郷土料理で日本一周!?
挑戦も、「仲間と一緒なら楽しい!」

東京都調布市にある保育園で、現場責任者として給食調理や栄養管理を担う森敦子さん。
 乳・卵・小麦をはじめとしたアレルギー原因物質を使わない「なかよし献立」を採用する園で、パスタやチキン南蛮など予想外の新メニューを考案したり、「園児に郷土料理で日本一周してほしい」と願い、制限の中で様々なアレンジを試みたりと、「おいしい!」の声を引き出しています。 立ち上げ当時の苦労を振り返りながらも「いま仲間と一緒に働くのが楽しい!」と話す森さんに、お話を聞いてみました。  

ソシオフードサービス 保育園現場責任者 森敦子さん

全食「なかよし献立」の園で、予想外の新メニューを考案

――森さんの現場は全食がアレルギー対応の献立と聞いています。最初は苦労があったのでは?

立ち上げ当初はすごく苦労しました。乳・卵・小麦が材料として使えない「なかよし献立」の園なのですが、例えば、小麦の代わりは米粉か片栗粉、バターをはじめとする乳製品や卵は使えない。

お菓子を想像していただけると分かりやすいと思うのですが、「膨らまない、生地が重い、仕上がりが硬い」っていうのが特徴な気がします。お菓子は今でも難しいですね。

――森さんの努力で、なかよし献立のバリエーションも増えたと聞いています。

はい。パスタが食べられるようになりました!小麦フリーの麺を食材提案して導入していただくことができました。園の先生方も「なかよし献立でパスタが食べられるなんて!」って、感動してくださいました。

――すごいですね。新しい献立っていうのは、どうやって提供できるようになるのですか?

新しいメニューを提供したいと思いいろいろ調べます。すると、乳を使ってないチーズや、米粉が原料のフレークなど、これまで知らなかった新しい食材に出会えたりします。その食材を使ってどんな新メニューが考案出来るかな?と、更に調べます。

――新しい献立を考えたいなって思うのはどうしてですか。

園児さんたちに喜んで頂きたいという思いからです。先生方から聞く子どもたちの嗜好や苦手なもののお話をもとに何にしようかなと検討したりします。

――ちょっとした会話にヒントがあるのですね。

そうですね。叶えられるものがあれば取り入れたいなって思っています。食べてくれる方の気持ちや想いに寄り添えたらって。新しいメニューを考案提供した際は、子どもたちの反応を見に行ったり、先生方も一緒に召し上がっているので感想を聞いてみたりしますね。

――これまで提供していたレシピの改善にも取り組まれたと聞いています。

なかよし献立給食のご提供初年度から一年間ほど「HAGU(ハグ)」というチームに参加していました。本部1人と、私を含む各エリアのチーフ3人がメンバーで、毎月1回集まって意見や情報交換、試作などの活動をしていました。園で実際に調理指示書をもとに作ったメニューの調味料分量変更や残食量などを分析したり、成功したレシピをフィードバックしたり。それで改良した調理指示書をもとに調理者みんなが同じように作れるようになったら良いなぁという思いでした。

――データのフィードバックって具体的にはどういう内容ですか?

例えば、「豆乳100CCと油50CCで混ぜるレシピに対して、豆乳150CCと油50CCに変えた方がうまくいったよ」みたいな。

――レシピ改善って細やかで地道ですね。

そうですね。あとは、子どもたちが苦手な野菜を使うなどテーマを決めて新メニューを考案し、4人で試作し試食。工程や味、見た目などを吟味し、「これなら現場で出来そうだね!子どもたちも食べてくれそうだね!」って。それを実際に本部が新メニューとして導入してくれると嬉しかったです。HAGUチームとしての活動は現在休止中ですが、今も現場の園で出来る限り取り組んでいて、それも本部にフィードバックしています。

――新メニューを考案する際に考えていることは何ですか?

私自身、食べることが好きで楽しみのひとつです。給食のマンネリ化防止や食育、また今はコロナで旅行になかなか行けなかったりするので、いろんな土地のお料理を郷土料理として取り入れることでちょっとした旅行気分を味わえたり、給食の時間を少しでも楽しみに思っていただけるような、そんなメニュー作りを意識しています。

夢は大きく!保育園生活5年間かけて「郷土料理で日本一周」

――なかよし献立で郷土料理ってすごいですね。例えば…?

これまでで一番喜ばれたのはチキン南蛮ですね。これは「乳・卵・小麦」不使用で苦戦したところが2点ありまして。一般食であれば衣は片栗粉か小麦粉で作りますが、なかよし献立では粉の代替えが米粉になります。米粉って元がお米なので冷えると硬くなるし、揚げても硬くなります。お餅やおかきみたいなイメージですね。

―へええ、そうなのですね。

米粉を使った衣を軽い食感に仕上げるためにはどうしたら良いだろうって考えて、ベーキングパウダーと重曹を一緒に使ってみることにしました。実際に自宅で試作してみて、家族と一緒に食べてみると「おいしいね」って。チキン南蛮は甘酢を絡めるので衣がくたびれやすくなるのですが、米粉の衣はずっとサクサクでした!

――聞いているだけでおいしそうです。2点目に苦労した点は何でしたか?

2点目はタルタルソースです。タルタルソースってベースが卵とマヨネーズなのです。そこを、卵不使用のマヨネーズにレモン果汁と玉ねぎ、隠し味にケチャップを合わせて味を近づけました。

――なかよし献立でまさか出来るなんてっていうレシピですね。

はい。チキン南蛮は先生方にもとても喜んでいただけました。卒園を控えた5歳児さんのリクエスト給食としても挙げていただけて、本当にうれしかったです。

郷土料理で日本一周!

 

――他にも思い入れのある献立はありますか。

やっぱり郷土料理ですかね。私が入社した当初から一番お世話になっている大好きな先輩チーフのアイデアで始まり、それを引き継いでいるんです。夢はでっかくというか、郷土料理を1ヶ月に1品以上ご提供して、園児さんが保育園在園中に給食で日本一周してもらえたらなって(笑)。「なかよし献立」で季節感と郷土が被らないようにピックアップするのは意外と難しいのですが。

――直近だとどんなメニューを提供されましたか?

鶏ちゃん焼きっていう岐阜県の郷土料理です。北海道の鮭のちゃんちゃん焼きってご存知ですか?この鮭が鶏に変わったようなお料理です。保護者様向けに毎月給食だよりも作っているのですが、裏面の「今月の郷土料理のご紹介」っていうコーナーで由来紹介もしています。あとは、園のエントランスに給食を飾るディスプレイがあるのですが、郷土料理の日は簡単なご紹介メモも一緒に置いています。

園長先生からお伺いしたのですが、お迎えに来られた親御さんが給食のディスプレイを見て、お母さまご自身の故郷のお料理だったようで、「お母さんこれ、小さい頃よく食べたんだよね」っていう話をお子さんにされていたことがあったそうです。

――素敵ですね。

ますますいろんな郷土を給食で巡りたいって思いましたね!(笑)。

給食だよりで岐阜県の郷土料理「鶏ちゃん焼き」を紹介しました

食事の時間がリラックス出来る時間になると嬉しい

――責任者として大変なことも多かったと思いますが、何がモチベーションとなって、今まで続けてこられたのでしょうか?

子どもたちや先生方に「おいしかったよ」と言ってもらえたり、残食が少なかったりすると嬉しいです。そういえば、チキン南蛮の時は、先生から「おいしくて癒された~」ってお言葉をいただけすごく嬉しかったですね。そういうのがモチベーションかもしれないです。

お食事でリラックスができて、「午後もお仕事がんばるぞ!」って思ってもらえるような、そんな役割もお給食で担えたら嬉しいなって思いました。

――「癒された」ってすごい感想ですね…!

まだ1回しかないですけどね(笑)。

「みんなが職場に来るのが楽しい」が理想。一緒に働く仲間への想い

――では、森さんの原動力はやっぱり、お給食を食べてくれる方々の反応が一番大きいのでしょうか?

それももちろんですが、それと、一緒に働いている仲間のこともみんな好きでお仕事が楽しいです。責任者になりたての頃、一緒に働く方との人間関係がなかなか上手く構築できなかった時期もあり、辛い経験もしました。

――そうだったのですね。

責任者になりたての年だったので、とにかく現場をちゃんと回さなきゃという焦りで余裕がなく、皆さんの「助けよう」っていう温かい気持ちに気付けず、ずっと一人で空回りしてたのではないかと思います。

――どう乗り越えたのですか?

当時のマネージャーに「リーダー研修」に参加することを薦められました。リーダー研修ではとても学びがありました。自分は何でもできなきゃって思っていたのですが、一人では何でもできるわけじゃない、限界があるんだって気づけたんです。今はみんなの良いところを出し合って、伸ばし合って、それで現場が上手く回って、おいしい給食が提供でき、その結果お客様に喜んでいただける、それが一番良いんだって思うようになりました。

――当時を振り返って、今の心境はいかがですか?

いろんな方と出会ってお仕事を一緒にしていくうちに、自分には無い良いところを持っている方がたくさんいると気づきました。良いところをお互いに尊重しあって、それぞれの力を発揮して、一緒に成長していけたらもっと良いものができるんじゃないかなって思います。

私は性格的に保守的なタイプで、どちらかというとアイデアが浮かばない人です(笑)。なので、メニュー考案の際も「こういうのどう思う?」って一緒に働いている仲間に相談したりします。 人間関係でも何でも、自分が絶対に正しいとは思っていないです。いろんな意見があって、私が「おいしい」と思ったものを「嫌い」と言う人もいるだろうし、「正しい」と思ったことに対して「こっちのほうが良いよ」って言う人もいると思うので、その辺は柔軟にいろんな意見を聞きたいなと思っていて。そのうえで、みんなで納得してやってみたいって思うものを選んでいければ、それが一番良いものになるのかなって思っています。

――みんなで作り上げていく雰囲気があって素敵ですね。

お互いに尊重しあえたその先に楽しいがあると思っているので、「独りよがりになっていないか」といつも気を付けるようにしています。一緒に働いている皆さんのおかげで、いまは仕事が楽しいです。「みんなが職場に来るのか楽しい」って思っていただけるのが理想で、そんな職場づくりを目指していきたいです。